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京大院卒サラリーマンの思考履歴(仕事術・資格勉強などの自己啓発,理系就活,修士研究,株式投資など)

新社会人へ「負けを認めて、全てがはじまった」

「お前って、良い顔しいだよな」

1年目の頃に、同期から言われた言葉だ。要は「虚勢を張っている」と言われたのだ。

 

その年の3月に自分は京都大学大学院を卒業した。

部活やバイトをしながらも、大学の講義は休むことなく出席し、

課題レポートの作成や小テストの準備も手を抜くことなく取り組んだ。

中間・期末試験でもほとんど90点以上で、基本は“A”評価以上。

もちろん落単なんぞは一度もしたことはなかった。

 

大学でのゼミや研究でも、次回までのノルマを明確にした上で、

しっかりと課題に取り組み、何かしらの成果をつくって臨むようにしていた。

 

就活でも、始めこそ少し苦労したものの、20社以上のインターンに参加し、

色々な企業の選考などを通じて経験値を増やし、

就活というフィールドにも次第に慣れる中で、楽しめるようにまでなった。

結果的には第一志望であった大手インフラ系事業会社からの内定を勝ち取った。

 

自分は、一般的に言う模範的学生だったと思う。

現に、学内では学科最優秀学生賞、学外の学会発表において受賞歴がある。

インターンや選考を通じて同期の中でも優秀な方だと思っていたし、

入社後はスムーズに社会人として適応し、優秀な新入社員になれると想像していた。

 

入社してから数カ月が経ち、担当業務を任され始めた頃に、

同じ配属となった同期から言われた言葉が

「お前って、良い顔しいだよな」だった。

職場の飲み会の二次会で、その同期と2人きりでいる時だった。

 

彼女からそれを言われたときは、突然の言葉に驚くとともに言葉を失ってしまった。

同期とは言え、互いに腹を割って語り合うような間柄にはなっていなかったからだ。

どちらかと言うと、同じ職場に配属されたライバルであり、

バチバチとした関係性で、あまり必要以上には馴れ合わないようにしていた。

その飲みの場でも、互いを探り合うような会話が続いていた。

 

少し沈黙が続いた後、なぜそう思う理由を聞いた。

返ってきた答えは、実に的を射ていて、当時の自分に刺さりまくった。

要は「無駄なプライドを捨てろ」ということだった。

 

そんな彼女は、日本が誇る東京大学・同大学院卒で、

さらに東京女子高の御三家出身というエリート中のエリートだった。

 

今だから素直に言えるが、

当時の自分と彼女の社会人としての能力、パフォーマンスの差は歴然だった。

頭の回転の早さ、資料・議事録作成の早さ、

そこに表れる文章力、打合せの発言から垣間見える物事の本質を捉えるセンス、

納期に対するコミット力、周囲を巻き込む力、

ほぼ全てが1年目社員に要求されるレベルを遥かに超えるものだった。

 

当然、当時の自分も何でもそつなくこなす彼女との能力の差を内心理解していた。

生まれ持った才の違いも痛感していた。

しかし、負けず嫌いな性格と京大卒という自負によるプライドが邪魔をして、

自分の実力不足を素直に受け入れることができず、

周りに対しても自分に対しても正直な言動をとれなかった。

 

業務中に2人で何かを説明を受けた際には、彼女の理解のペースに付いて行けている

ようなふるまいをして虚勢を張ることが多々あったというわけだ。

 

新入社員がそのような行動をとってしまうことの何がまずいかというと、

一向に成長できないことである。

 

時々刻々と状況が変化するビジネスの現場においては、

生じた不明点や疑問はリアルタイムで、説明者や先輩等へ質問し、

その場その場で解消しながら学んでいかなければ成長できない。

 

にも関わらず、当時の自分は無駄な虚勢を張ってしまい、

その成長の機会を自らドブに捨ててしまっていたのである。

 

「自分の実力不足(負け)を受け入れられない人間は、絶対に成長しない」

 

前置きが長くなったが、これが自身の新入社員時代に得た教訓であり、

今回お伝えしたかったメッセージである。

 

恐らく、そんなのは当たり前のように感じる人も多いと思うが、

いざ当事者としてそのようなビジネスの場で同じ状況になった時に

“素直に負け、自身の実力不足を認められる”人は意外と少ないと考えている。

打合せで疑問をそのまま放置してしまった経験のある人も多いはずだ。

 

これからの活躍を期待され、お手並み拝見といった様子で

注目の的となる新入社員はなおさら、期待を裏切るまいという思いから、

虚勢を張りたくなってしまう。現に自分がそうだった。

 

仕事のやり方や会社のルール、業務知識などを大いに吸収すべき新入社員の頃に、

分かったようなふりをしてしまうことが成長に歯止めをかけてしまうことは、

火を見るよりも明らかである。

 

またそれは能動的な成長にも支障をきたしてしまう。

なぜなら、虚勢を張るということは、自分の真の実力から目を逸らすことだからだ。

自分の真の実力を理解していない人間が、成長することは極めて難しい。

 

なぜなら、成長≒能力が高められた状態とし、

それをゴール(ありたい姿)とした場合、

まずは現状(問題を抱える状態)とゴール(能力が高められた状態)のギャップを

推し量ることが成長する上では不可欠だからだ。これは問題解決の手順と同じである。

 

問題解決の基本手順は、

  1. “問題を抱える現状”と“ありたい姿”を明確にした上で、
  2. 両者の間に存在するギャップを把握し、
  3. そのギャップを解消するあるいは縮小するための課題を設定し、
  4. その課題を具体的な対策ベースまで落とし込み実行する

ことである。上記の手順をPDCAサイクルで回しながらゴールを達成していく。

 

当時の自分は、自分よりも能力の高い彼女と比べられることのプレッシャーや、

プライド等により、実力が不足している現実から目を背け、

正しく問題を認識することが出来ていなかったことから

正しい課題設定ができずに、結果的に成長に歯止めがかかってしまっていた。

 

そのような状況に陥っている際に、私は幸いにも、

同期の彼女からの「お前って、いい顔しいだよな」という当時の言葉で目が覚めた。

 

そして、その言葉をきっかけに、少しずつではあるが、

自分の能力と真っすぐに向き合えるようになった。

 

具体的には、分からないものは素直に分からないと認め、

周りからの評価とは一旦距離を置き、着実に自分のペースで仕事を理解し、

あせらず少しずつスキルを蓄積し、確かな成長へと繋げていけるようになった。

 

結果として、今では本社役員や幹部対応も若手ながら抜擢されるようになったり、

とあるメディアで活躍する若手として取り上げてもらう機会なども運よく得たりした。

 

新社会人となる皆さんも、優秀な同期と同じ配属となり、

比較される中で悔しい思いをすることがあるかもしれない。

その際には、卑屈になることなく、少しずつでもよいので

現状を素直に受け入れて、焦らずに一歩一歩前へと歩みを進めて頂きたい。

 

 

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